最強ババア
私の亡くなった祖母は、とにかく口が悪かった。90手前まで長生きしたが、彼女の性格は漫画にでてきそうな昭和初期のババアだった。
孫である私のことは大変可愛がってくれたが、嫁に来た私の母には、それは酷い嫁いびりをしていたらしい。
私が中学生の時、爺さんの法事で親戚一同集まる機会があった。
お坊さんが来て、お経を唱えて
説法を話し、お茶を飲み終えた坊さんが帰ろうとした、その時
片手にお布施を持ったババアが
坊さんに向かって
「このお布施ほしいか?」
っと言い放った。
ババア以外のここに居る一同が静まりかえった。
誰も何も言えない。
ババアを静止することもできない。
坊主も困っている。
きっと喉から手が出るほど欲しいであろうお布施も、欲しいです!っと言えるわけがない、逆にいりません!とも言えない。そう、彼の給料に値するものだから。
みんなが汗を吹き出しそうになった時、
ババアが
「ほら、やるよ!」
っと、坊主にお布施を手渡した。
みんながホッとした瞬間だった。
それ以降、坊さんはババアの前では真面目坊主を演じてきたが、ババアが他界した途端、毎回高級車でやって来ては、お経は5分間と手抜きをし、説法は全くしなく、お茶すら飲まず、お経で立ったと同時に帰るという、かなりずさんなお坊さんになっていった。これもババアの悪ふざけが原因なんだろう…。
ババアは他界する寸前まで頭も身体も丈夫でしっかりしていたので、介護の必要もなく、すっと旅立っていった。悪ふざけが多かったが根は孫思いで働き者の祖母だった。
今では天国で誰をいびってるのか…ニヤリ